坂田 勝彦Katsuhiko Sakata教授

地域社会論、生活史、社会問題の社会学
研究概要
戦後日本の社会変動と地域社会の関係について、それを現に生きてきた方々の経験や実践をもとに検討しています。
研究内容
- 病いや障害を巡る差別と共生の戦後史
- 旧産炭地における経験と記憶の社会学
- 災害と復興に関する調査研究
代表的な研究業績
- 『ハンセン病者の生活史――隔離経験を生きるということ』(青弓社、2012年)
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「原発事故による避難について考えるために――生活の再建を巡るジレンマ」好井裕明編『排除と差別の社会学[新版]』(有斐閣、2016年)p303-321
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「炭鉱の閉山に伴う広域移動経験者のライフヒストリー――生活と自己の再構築に着目して」『日本オーラル・ヒストリー研究』第十三号(2017年)p111-127
研究紹介
私は「戦後」という一見身近でよく知っているように思われながらも、実はまだその有様が十分に検討されてきたとは言い難い時代と社会について調査・研究を進めています。その中で特に意識しているのが、その時代や社会において問題になってきたことついて、現にそれらを生きてきた方々の経験と記憶から考えていきたいということです。
例えば、多くの人が中学校や高校の授業で一度は聞いたことのある「エネルギー革命」という言葉があります。それは産業を支えるエネルギー源の流体化をさし、戦後日本の経済成長を可能としたものであった一方、それまで石炭産業で働いてきた人々やその家族、産業が長年位置づいてきた地域社会の在り方を根本的に変えてしまうものでもありました。この十年ほど続けている旧産炭地での調査を通じて、そうした社会の変化に遭遇した人々の経験は、いつ・どこで・誰と・どのような状況で対したかによって全く異なるものであったこと、そして、そうした時代と社会の記憶は決して過ぎ去ったものとしてではなく、喜びや悲しみなど様々な思いとともに今もたしかにこの社会の中で生きられていることを知りました。
一人ひとりの人間の、様々な情緒や記憶が託された人生を糸口に、時代と社会の有様を検討していくこと。そうした視点から改めて「戦後」について知ることで、翻って私たちが生きる現在の有様もまた問い直すことができるのではないかと、私は考えています。